PE1406_p42-46_JIPM

 

Embed or link this publication

Description

PE1406_p42-46_JIPM

Popular Pages


p. 1

人材育成 海外における資格認定制度 「Monodzukuri Test」 の創設について 日本プラントメンテナンス協会 角田英政 1 はじめに 日本プラントメンテナンス協会 (JIPM) は、 2014 年に、海外製造現場の従業員を対象とした 資格認定試験である Monodzukuri Test を創設 した。 近年、日系企業による生産のグローバル化が 加速し、JIPM に対しても海外拠点への各種支援 要求が高まっている。そんな中、日本における モノづくりの知識や考え方を、日系企業を中心 に広く海外へ普及することが海外生産現場にお ける課題解決支援につながるものと考え、資格 認定制度という形で展開することとなった。 日系企業による進出は、アジア圏を中心に広 がりを見せるが、創設初年度はタイにおいて運 用を開始する。図表—1 のとおり、タイは日系 企業の進出先としては第 3 位の地域であるだけ でなく、生産拠点として近隣諸国をリードし、 一部企業においては開発の役割も担うように なってきた。また、当会の行う TPM 賞の受賞企 業数も多く (図表—2) 、日本発の資格を受け入れ る下地が比較的整っているものと捉えている。 一方で、人材育成は各国で共通の課題であり、 一刻も早い他地域への展開も望まれていること から、タイでの実施を足がかりに、実施地域・ 言語を拡大させていく計画だ。 2 制度の名称 順位 国・地域 順位 国・地域 件数 1 中国 1 インド 57 2 アメリカ 件数 6091 3376 図表—2 国・地域別 海外 TPM 賞 受賞事業場数 TOP6 (2011 ~ 2013 年度) 2 タイ 50 3 中国 16 4 ブラジル 5 台湾 6 トルコ モノづくりという言葉が頻繁に使われるよう になったのは、1990 年台後半からと 図表—1 日系企業の進出先 言われる。文字での表し方はいくつか 3 4 5 6 7 8 9 10 あり、モノづくり、ものづくり、もの つくりなどが見られるが、その意味や 示す範囲も発信者によって微妙に異 なっているようだ。ただ、言葉が使わ れる際の共通のニュアンスとして、 「日 1853 1220 1111 989 862 847 829 815 という枕詞が含まれているように (2012 年 10 月 東洋経済新報調べ) 本の」 感じられる。生産のグローバル化が進 シンガポール インドネシア マレーシア イギリス タイ 香港 台湾 む一方で、 その原点あるいはアイデンティティー は日本にあるということを示そうとしているの かもしれない。 今回の制度においても 「Monodzukuri」 という 日本語の発音を残しているのは、海外へ展開す る日本発のテストであることを表わすとともに、 「つくるだけ」 、 「直すだけ」 ではなく、もっと多様 韓国 15 14 12 42 Plant Engineer Jun.2014

[close]

p. 2

人材育成 な役割を与えられる日本の生産現場における知 識であることも意味している。ロゴ (図表—3) に ついても、歯車で製造業的な雰囲気を出しなが ら、日の丸、富士山を連想させるシルエットで 日本らしさを表した。 図表—3 ロゴ 3 制度の目的 日本では、資格大国と言われるほどに多種多 様な資格試験が行われている。ご当地検定のよ うなユルいものもあるが、仕事に関わるものは、 あらゆる産業の職種に対して資格制度が存在し 定着している。一方で、日系企業が多く進出す る東南アジアをはじめとした海外においては、 こうした制度が存在しないか、あったとしても 根づいていないことが多いようだ。 製造拠点において、人材育成は各国共通の課 題となっている (図表—4) 。 生産活動においては、 オペレーターをはじめ管理 ・監督者、 保全員など、 現場の人を計画的に育成し、仕事の仕組みをつ くり上げることが重要になるが、日本では人材 の教育や評価基準として、多くの資格制度が活 用されてきた。 「Monodzukuri Test」 も、単に資格取得による 知識レベルの評価だけではなく、それに向けた 教育資料・体系を構築することにより、日系企 業を中心として、広く日本発のモノづくり知識 を普及させることを目指している。 図表—4 ASEAN 地域製造業の課題:上位 5 項目 (JETRO 日系企業調査 2012 年度より) 回答項目 % 80.6 55.3 54.9 52.4 49.3 1位 2位 3位 4位 5位 従業員の賃金上昇 競合相手の台頭(コスト) 現地人材の能力・意識 取引先からの値下要求 従業員の質 (企業名アルファベッ ト順) 図表—5 トライアルテスト参加企業 日系企業 Auto Alliance Thailand(マツダ関連会社)/ Eternal Sakata Inx (サカ タインクス関連会社)/ Siam Toyota Manufacturing(トヨタ自動車関 連 会 社 )/ Thai Coated Steel Sheet・Thai Cold Rolled Steel Sheet・ West Coast Engineering(JFE ス チ ー ル 関 連 会 社 )/ Toyoda Gosei Thailand (豊田合成関連会社)ほか タイ企業 Siam Cement Group / CPF Thailand(Chicken Processing Product) ほか 4 海外における制度づくり JIPM としても、海外で資格認定制度を運用 するのは初めての経験だ。国内では、年間受験 者数が 13000 名を超えるまでになった自主保全 士検定試験をつくり上げてきたノウハウを持ち、 「Monodzukuri Test」 においてもこれをベースと した制度設計をすることとしたものの、日本の経 験をどこまで活用することができるか、何を見直 す必要があるのかを、企業へのヒアリングとトラ イアルテストによって調査・検討してきた。 トライアルテストは、2013 年 11 月に、現地 に工場を持つ日系およびタイ企業から 8 社 (グ ループ企業を含む)286 名の協力を得て実施し た (図表—5) 。テストでは、水準の比較ができる ものとして自主保全士 2 級の過去問題を使用し、 主な対象者層、科目、難易度、出題方法などを 検討するため、製造部門や保全部門から幅広い 役職の方に参加いただいている。 事前に学習を行わずに実施したため単純な比 較はできないが、特徴的な結果として、ロスや 効率に関連する問題については自主保全士検定 の平均正答率と大きな差が見られた。また、用 語のタイにおける訳し方も企業によって異なっ 43 Plant Engineer Jun.2014

[close]

p. 3

人材育成 ていることが少なくなく、こうした点も結果に影 響を与えたようだ。 たとえば 「チョコ停」 という単語の場合、タイ 語の近い意味の翻訳をしたり、short stop のよ うに英語にしているケースもあった。出題され た見慣れない単語に困惑した人もいたようだが、 そういった企業間の言葉の壁についても、後述 するテキストによって、共通化していければと 考えている。 また、トライアルテストと合わせて、参加者 および業務担当者の方へのアンケートを行って いる。このアンケートでは、試験科目について は自主保全士制度から大きな変更を希望される ことはなかったものの、対象者層としてはオペ レーターよりも上の階層、あるいは保全員を想 定される回答が多く寄せられた。 図表—6 試験情報 ■試験形式  試験方式:ペーパーテスト  出題数:二者択一問題 = 75 問/多肢選択問題 = 5 課題  試験時間:90 分 ■出題範囲(科目・項目・細目) 科目 5S 項目 細目 5S による管理 品質管理の基本 QC7 つ道具 QC データの管理 新 QC7 つ道具 QC 工程表 品質保全・8 の字展開 安全活動の考え方 ヒューマンエラー ハインリッヒの法則 ヒヤリハッ ト KYT と KYK 指差呼称 本質安全化 安全点検の目的と種類 作業の安全 工作機関作業における安全知識 電気機器作業における安全知識 搬送機器扱い作業に関する安全知識 安全パトロール 安全管理 作業標準 作業管理 生産管理と進度管理 メンバーシップ リーダーシップ OJT と Off-JT 伝達教育 教育計画 スキル評価 教育訓練体系 公害の基礎知識 ゼロ・エミッション 3R の推進 分別回収 環境マネジメントシステム TPM の定義 TPM の基本理念 TPM のねらい TPM の特色 TPM の効果 活動の 8 本柱 生産活動の効率を阻害する 16 大ロス 操業度を阻害するロス 設備の効率化を阻害するロス 人の効率化を阻害するロス 原単位の効率化を阻害するロス 慢性ロス 設備総合効率 時間稼動率 性能稼動率 良品率 プラントの 8 大ロス ロスの構造とプラント総合効率 故障ゼロの考え方 強制劣化と自然劣化 故障に関する用語 保全用語の理解 生産保全 事後保全 予防保全 時間基準保全 状態基準保全 改良保全 保全予防 QC ストーリー ブレーンストーミング なぜなぜ分析 PM 分析 作業改善のための IE 手法 価値分析 FMEA・FTA からく り改善とは からく り改善の定義 からく り改善の機構要素 改善目的による区分 自主保全とは 製造・保全部門の役割と活動 自主保全展開の進め方 マスタープランと目標の立て方 自主保全実践のポイント 自主保全活動の安全 自主保全三種の神器 エフの効用 活動のステップ診断 目で見る管理 定点撮影 マップの活用 事前準備 事前準備の概要とねらい 基本的な知識 (事前準備) 初期清掃の概要とねらい 基本的な知識 (初期清掃) 効果測定 (初期清掃) 発生源・困難個所対策の概要とねらい 基本的な知識 (発生源・困難個所対策) 効果測定 (発生源・困難個所対策) 自主保全仮基準の概要とねらい 基本的な知識 (自主保全仮基準) 効果測定 (自主保全仮基準) 総点検の概要とねらい 基本的な知識 (総点検) 効果測定 (総点検) 自主点検の概要とねらい 基本的な知識 (自主点検) 効果測定 (自主点検) 締結部品 潤滑 油圧 空圧 駆動・伝達 電気 工作機械 電動工具 金属の結合と溶接 改善に要する材料 図面の重要性 投影法 基本的な寸法記入法 表面性状と表面粗さ 寸法公差とはめ合い 品質 〈科目 3〉 改善・ 解析手法の 知識 改善・解析技術 安全衛生 からく り改善 〈科目 1〉 生産の基本 自主保全の基礎知識 工程管理 職場のモラール 自主保全活動の支援ツール 職場の教育訓練 〈科目 4〉 設備の 日常保全 事前準備 初期清掃 発生源・困難個所対策 自主保全仮基準の作成 総点検 自主点検 環境 TPM の基礎知識 〈科目 2〉 効率化の 考え方と ロスの とらえ方 ロスの考え方 日常保全の基礎 設備総合効率 プラントの 8 大ロスと プラント総合効率 故障ゼロの活動 保全方式 〈科目 5〉 日常保全の 基礎 改善作業に使用する 機器・材料 図面の見方 44 Plant Engineer Jun.2014

[close]

p. 4

人材育成 図表—7 出題イメージ 2014 年 4 月には、トライアルテスト参加企 業等の業務担当者に集まっていただき、意見交 換会も開催した。こうした調査・ヒアリングを 参考に制度づくりをしてきた。その試験内容を 次項に示す。 5 試験内容 試験の詳細は、2014 年 5 月 19 日に、受験案 内を JIPM ホームページ (http://www.jipm.or.jp/ business/training/monodzukuri.html) にて公開 予定なので、そちらを確認いただくとして、こ こでは試験の内容について解説する。 図表—6 をご覧いただきたい。試験は筆記 (マークシート) 式で、二者択一問題と多肢選択 問題から構成され、これを 90 分の試験時間で 解答していく。自主保全士検定試験も出題方法 は同じだが、問題数と試験時間は 「Monodzukuri Test」 の方が少なくなっている。 科目は自主保全士と同じく生産の基本、効率 化の考え方とロスのとらえ方、改善・解析手法 の知識、設備の日常保全、日常保全の基礎の 5 科目からなるが、項目・細目については多少変 更した。また、多肢選択問題については、受験 案内の中で出題候補の項目を提示し、その中か ら 5 課題を出題する。実際に出題される問題の イメージ (タイ語) を図表—7 に示す。 なお、 「Monodzukuri Test」 に関する今後のス ケジュールは、図表—8 のとおりとなっている。 受験案内は日本語だけでなくタイ語のものも用 意するので、タイに拠点を持つ企業におかれて は、ぜひ、現地拠点へのご案内をお願いしたい。 6 テキスト・教育 Monodzukuri Test 制度においては、資格認定 試験を実施するだけではなく、認定に求められ る知識を得るために必要な教育も提供する。具 体的には、試験科目に沿った内容のテキストと、 その内容を解説し理解を助ける公開講座の 2 つ のコンテンツを用意した。タイにおいて、タイ 人が受験することを念頭に置いた制度であるた め、どちらもタイ語である。 テキストは、自主保全士試験をベースに、ト ライアルテストの結果や企業からのヒアリング を参考に作成した。タイにおいては、社内での 45 Plant Engineer Jun.2014

[close]

p. 5

人材育成 図表—8 スケジュール 2014 年度 日程 6 月 27 日 6 月下旬~ 7 月中旬~ 8 月 1 ~ 29 日 11 月 15 ~ 25 日 1 月 14 日以降 ※実施・開催地はタイ 内 容 説明会開催 テキスト販売 公開講座開講 申込期間 試験実施期間 認定者発表 しい場合は数日設備が止まったまま、放ってお くということもあるようだ。 Monodzukuri Test は、日本における自主保全 士 2 級相当の出題範囲、難易度で実施する。自 主保全士 2 級はオペレーターを主な対象として いるが、タイにおいては、むしろもう少し上位 の階層からベースを固めていくことの方が大き な課題であるとの意見も多く、 「Monodzukuri Test」 においては生産部門の管理・監督者層、あ るいは保全部門を当面の主な対象としている。 教育に使用できるような市販の教材などがまだ まだ十分ではないという話も聞くため、ぜひ活 用いただきたい。 なお、タイでの試験実施にあたっては、現 地 の 公 益 団 体 で あ る Technology Promotion Association (Thailand-Japan) (TPA) の協力を得 て運営にあたる。TPA はタイの経済発展を目的 とし、名前が示すとおり、とくに日本との関係 を築いており、科学技術の向上のため教育・出 版などの事業を展開している団体だ。JIPM と も海外 TPM 賞をはじめ長年の交流実績を持ち、 「Monodzukuri Test」 においても、試験運営のほ か、現地でのテキストの販売や公開講座を実施 する。 8 今後の展開 2013 年より、本格的に 「Monodzukuri Test」 実施に向けたヒアリングを始めているが、タイ を訪問するたびに本制度への期待の高さを感じ る。企業規模の大小にかかわらず、従業員への 教育に対するニーズは高いものの、そのすべて を社内でまかなうことはむずかしいところが多 い。テキストづくりをはじめ、日本で実績のあ る教育と、学習のモチベーションにつながる資 格認定というのは、魅力であると捉えていただ いているようだ。 まずは2014 年度、 タイでの運用開始となるが、 複数の国に進出する企業からは、早くもタイ以 外での実施を望む声もいただいている。JIPM と しても、日系企業からの要求に応じ、さらなる 展開を望むところではあるが、まずはタイでの 実施によって海外での経験と実績を積みたいと 考えている。また、新しい制度ということで、 利用者からの要望にも柔軟に対応し、たとえば 上位級の設定であったり、オプション教育の実 施なども検討したい。 ■ Monodzukuri Test に関するお問い合わせ 普及推進部 海外事業推進グループ (担当・角田) T E L:03-5733-6900 MAIL:M-TEST@jipm.or.jp U R L:http: //www.jipm.or.jp/business/training  /monodzukuri.html ※上記ページにてタイ語による各種情報 (TPA の Web ページ) へのリンクも貼っております 7 海外における課題 海外においては、離職率の高さがしばしば話 題としてのぼる。 「Monodzukuri Test」 の実施に ついても、自身の評価につながる資格を取得す ることで、より給料の高い他社へと転職してい くか、給料アップの要求があることを懸念する 声が少なからずあった。ただ、 現場のレベルアッ プに教育は不可欠であり、何もしなくても離職 率が高いのであれば、むしろ目標を持つことに よってモチベーションアップにつなげていく方 が、トータルとしてはメリットが大きいという声 の方が多かった。 また、設備のレベルが高くなる一方で、なか なか保全には目が向いていない、あるいはそこ まで手が回らない企業も多い。修理はすべて業 者まかせというケースも少なくなく、業者が忙 46 Plant Engineer Jun.2014

[close]

Comments

no comments yet